パンドラの匣――★★★
太宰治といえばなんだか、地の底に降りていくような、暗い小説を書く人、というイメージがある。「人間失格」「斜陽」などなど。あるいは「走れメロス」を思い浮かべるくらいである。
太宰 治著
新潮社 500円 それが、この本は明るい青春小説集なのである。
明るく、ユーモアにあふれ、未来への希望に満ちている。
「正義と微笑」は、戦時中に書かれた日記形式の小説。戦時下の暗い影などなく、直向きに学び、人生を希求する青年(少年かな)の姿が清々しい。
「パンドラの匣」は、戦後すぐに書かれた書簡形式のもの。結核療養所で入所した青年と同室の人たち、療養所(小説中では道場)の看護師(小説中では助手)たちとの交流がユーモアを交えて描かれ、思わず微笑を誘う。そして、人生に対する真摯な思い、淡い恋の朗らかな諦観(?)が胸を打つのである。
明るい太宰治を読みたい方、是非、どうぞ。
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