「不当な選択」に負ける!
不当な選択を迫る、誤導尋問ともいう。
誤った前提に相手を誘導し、不当な言質をえるという詭弁。
ある夜のこと。
食後、テレビを見ながら一息入れていると、妻が靴下を脱ぎはじめた。
彼女の基本は裸足である。
隙あらば裸足になろうとする。
で、その脱ぎ終わった靴下をどうするのかとみていたら、その場に置いたままである。
いつまでたってもそのままである。
妻は、ニュースを見ている。
靴下はそのままである。
「ねえ、妻が14億も借金したんだって」
妻はニュースを見ながら話しかけてくる。
「そりゃあ、大変だ」
私も同じテレビを見ていたけれども、相づちを打つ。
靴下はそのままだ。
みかねて、私はその靴下を拾い上げ、酷烈に宣言した。
「脱いだ靴下は、洗濯機に入れなさい!」
「え~、だって脱いじゃったんだもの」
「それは、何の説明にもなっていない! 脱いだら洗濯機に入れるの! 今朝も布団の下から靴下を発掘したよ、ちゃんとしなさい」
「それは、そこで脱いだから仕方が無いじゃない」
「じゃなくて、洗濯機に入れるの」
「ねえ~、14億円借金あったらどうする」
いきなりの転換だ!
「まあ、そりゃあ、大変だよ」
「そうでしょう、14億円借金する妻と、靴下を脱ぎっぱなしの妻、どっちよ」
――なんだ、その問いは。不当な選択、誤導尋問じゃないか、そんなのに引っかかるわけがない。
「14億円の借金と靴下を脱ぎ散らかすことは関係がないし、どっちも嫌だね」
「だから、あなたもわからないわね。
14億円借金する妻と
靴下を脱ぎっぱなしの妻と
比べたら、どっちをとるかってことよ。
両方嫌だけど、選ぶとしたらどっちか、ってことよ」
「そりゃあ、まあ、借金に比べたら、靴下の方が……」
「でしょう、良かったじゃない、私が黙って14億円も借金しなくて、感謝しなくちゃ」
「そうだね、借金してないからな。良かった」
「じゃ、その靴下、洗濯機に入れておいてね」
――う、また、やられてしまった。まあ、でも借金に比べたらいいか……
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