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2007.01.07

「不当な選択」に負ける!

 不当な選択を迫る、誤導尋問ともいう。
 誤った前提に相手を誘導し、不当な言質をえるという詭弁。

 ある夜のこと。
 食後、テレビを見ながら一息入れていると、妻が靴下を脱ぎはじめた。
 彼女の基本は裸足である。
 隙あらば裸足になろうとする。

 で、その脱ぎ終わった靴下をどうするのかとみていたら、その場に置いたままである。
 いつまでたってもそのままである。
 妻は、ニュースを見ている。

 靴下はそのままである。

 「ねえ、妻が14億も借金したんだって」
 妻はニュースを見ながら話しかけてくる。

 「そりゃあ、大変だ」
 私も同じテレビを見ていたけれども、相づちを打つ。

 靴下はそのままだ。

 みかねて、私はその靴下を拾い上げ、酷烈に宣言した。

 「脱いだ靴下は、洗濯機に入れなさい!」

 「え~、だって脱いじゃったんだもの」
 「それは、何の説明にもなっていない! 脱いだら洗濯機に入れるの! 今朝も布団の下から靴下を発掘したよ、ちゃんとしなさい」
 「それは、そこで脱いだから仕方が無いじゃない」
 「じゃなくて、洗濯機に入れるの」

 「ねえ~、14億円借金あったらどうする」
 いきなりの転換だ!
 「まあ、そりゃあ、大変だよ」
 「そうでしょう、14億円借金する妻と、靴下を脱ぎっぱなしの妻、どっちよ」

 ――なんだ、その問いは。不当な選択、誤導尋問じゃないか、そんなのに引っかかるわけがない。

 「14億円の借金と靴下を脱ぎ散らかすことは関係がないし、どっちも嫌だね」

 「だから、あなたもわからないわね。

 14億円借金する妻と
 靴下を脱ぎっぱなしの妻と

 比べたら、どっちをとるかってことよ。
 両方嫌だけど、選ぶとしたらどっちか、ってことよ」

 「そりゃあ、まあ、借金に比べたら、靴下の方が……」
 「でしょう、良かったじゃない、私が黙って14億円も借金しなくて、感謝しなくちゃ」

 「そうだね、借金してないからな。良かった」

 「じゃ、その靴下、洗濯機に入れておいてね」

 ――う、また、やられてしまった。まあ、でも借金に比べたらいいか……

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