2009年9月の読書について
☆☆☆☆☆しがみつかない生き方――「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール
香山リカ 幻冬舎
香山リカしの本は何冊か読んだが、本書は力の入った一冊である。
それまでの本が力が入っていなかったのかどうかはわからないが、この本は彼女の真摯な訴えが、心のこもった文章が響くのである。
「恋愛」や「子ども」「人生の意味を問うこと」や「仕事の夢」とかにしがみつくな、と彼女は説く。
自己啓発本的には噴飯ものの主張をしているのである。
仕事にはやり甲斐がなければいけないとか、人生の意味を問うても答えはない、とか……。
特に出色なのが、「努力することが必ずしも結果に結びつかない、その現実を受け入れよ」といこと。
努力は何らかの結果に結びつくはずだ、と思うのだが、人生は有為転変、突然の事故、病でそれまでの計画が狂ってしまうこともある。
そうなのだ、こうすれば、「絶対に」こうなる、ということはないのである。
絶対がないこと、必ずということがないこと、を受け入れることから普通の幸せがあるというのだ。
さらにはやりの勝間和代氏へも言及する。「断る力」でなく、「耐える力」だという。
勝間氏のように絶え間なく依頼が来る人は「断る」ことも可能だろうが、普通は依頼が来ない状態に「耐える」ことだというのだ。
その通り、断るほど依頼が来てほしい。「耐える力」が試されているのだ。やれやれ。
REBT(旧名論理療法)でいうところの、無条件の受け入れということではないか。
こうでなければならない、と絶対的条件をつけるから苦しくなるのだ。
あるがままを観て、受け入れるところからはじまるのだ。
こうでなくては、「カツマー」にならなくては、と苦しくなった時に一読あれ。
☆☆☆☆☆素浪人横町 人情時代小説傑作選 池波正太郎 山本周五郎 滝口康彦 他 新潮社
浪人を主人公とした選集である。選者の選択眼が素晴らしく、どの作品も読み応えがある。
特に滝口康彦の緊迫した短篇は胸に迫るものがある。
山本周五郎の「雨上がる」もしっとりとしていて良かった。
☆☆☆ ハリウッド警察特務隊 ジョゼフ・ウォンボー 早川書房
巧みな構成、鮮やかな人物描写、ハリウッドの街角が生き生きと行間からたちのぼる。
小さな事件が積み重なり、一つへと集約していくのは前作と同じ。
警官群像を描きながら、一つの事件を、人生を浮かび上がらせる。素晴らしい作品だ。
☆☆☆ ころころろ 畠中恵 新潮社
相変わらずうまい、そして少しずつ世界が広がっている。
白沢の夢の話、若旦那の目の話、今までにない趣向で楽しませてくれる。
☆☆☆☆ 武士道エイティーン 誉田哲也 文藝春秋
武士道シリーズの完結編?
人生の岐路に立つ彼女たち、それぞれの道に進んでいくのだが、彼女たちを取り巻く人々の物語もはさまれ、物語の奥行きが深まっている。
その後のその後を読んでみたい。
武士道サーティン、フォーティン、エイティンとかね。
☆☆☆☆ 買おうかどうか 岸本葉子 双葉社
岸本さんのエッセイは、かわいらしい。私と同世代の女性のエッセイを表するには適切とはいえないかもしれない。だが、彼女のこだわりや一つのものに熱中してしまう様子は、微笑ましく、愛らしいのである。
買うかどうか、買ってみたらどうだったのか、を描いているだけなのだけれど、文章に引き込まれてしまうのは、さすがです。
☆☆☆ 裁判長!ここは懲役4年でどうすか 北尾トロ 文藝春秋社
北尾トロのルポルタージュは、何とも腰の引けているところがいい。
暑苦しい情熱とか鋭角な正義感とかドロドロとした怨念とかがない。
何となくやってみたら、こうでしたというのが心安く、心地よいのだ。
何となく裁判を傍聴したら、こうでしたというルポである。
大事件でもなく、ベタ記事にすらならないような裁判に人生が垣間見える。
傍聴者が多かったら張り切る裁判官や検事、反省すると言いながら、どくろマークの服を着てくる被告人、泥沼の離婚裁判、うごめく怪しい傍聴マニア等々。
裁判員になる前には読んでおきたい一冊だ。
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