« 2012年の映画 ベスト | トップページ | コミュニケーション能力は、どうしたら身に付く、向上できるのか【広告】 »

2013.01.06

2012年 印象に残った本

2012年 印象に残った本

昨年は、100冊強の本を読むことができた。
もっと、もっと読みたいものである。

まあ、少ない読書量だけれど、いい出会いもあった。
心に残る本をいくつか。

■今さらながらの本たち

 今さらながら、読んだ本。
 これがなかなか良かった。

○やけたトタン屋根の猫 テネシー・ウィリアムズ

 戯曲はほとんど読まない。読み慣れないので、難しいと思っていた。
 しかし、一読すると、まあ、もう、素晴らしい。
 人の欲望と愛憎が短い科白の中に浮かび上がる。
 エリア・カザンの演出用のものも併載されている。
 私はオリジナルの方が、短く素敵だなとは思う。

○悲の器 高橋和巳

 森田童子の「孤立無援の唄」を聴き、
 そうだ、高橋和巳を読んでみようと思いたったのである。
 今ではなかなか本屋でも見かけることはなくなってしまった。

 古本屋でやっと手に入れた。
 そして、読み終え、暗澹としたものである。
 頭を抱えて、遠くの夕焼けを眺めたくなった。
 渺漠のたる悲の光景に、憮然とするしかない。
 それほどの力を持った作品である。
 
○砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 桜庭一樹

 桜庭一樹は、凄いのか病んでいるのか、心抉られる物語を書く人である。
 この作品は、題名から何か、甘い青春ものなのか、と思っていたが、
 甘いどころか、苦い、苦く痛い、物語であった。
 まあ、そこがとても魅力なのだけれど。

○夜明け遠き街よ 高城高

 寡聞にしてこの作家を知らなかった。
 大藪春彦と同世代というから、かなりのベテランだ。
 この作品、バブル前の札幌すすきののキャバレーの黒服が主人公。
 夜の街で、姿勢よく生きていく姿が清々しい。
 
○月の影 影の海 小野不由美

 十二国記の評判は聞いていた。
 読んだ人は、誰もが薦めてくる。
 それほどのものなのか、と気になっていた。
 読んでみたら、確かにそれほどのものだったし、人に勧めたくなる。
 読まなくては、人生の損である。

しづ女の生涯 (1980年) (集英社文庫)

 短篇の名手である。
 短いお話しの中に大きな物語を凝縮させている。
 表題作は、しづという女の生涯を数十ページの中に詰め込み、滑らかに語っているのである。
 「春愁」が切ない。

■エンタメ関係 

 エンターテイメント系の小説も、もちろん好きである。
 昨年はっきりとわかったのだが、どうも日本のパズルストーリーは手に取らない、読まない。食指が動かないのだな。
 それ以外のエンタメ系では

○裏閻魔 中村ふみ

 参りました。全3巻一気読みでした。
 
○もぐら 矢月秀作

 新聞の書評欄で見つけた一冊。文庫本になって、売れはじめたという。
 大藪春彦のハードアクションに、人情をふりかけ、愛情をまぶした感じ。
 とりあえず、文庫版4冊を一気読みでした。

○サラの柔らかな香車 橋本長道

 ジャケットに惹かれて買ってしまった。
 う~ん、う~んと唸りながら読んでしまった。
 将棋、盤上の戦い、盤外の人間模様、それが鮮やかに描かれている。素敵。

○謝罪代行社 ゾラン・ドヴェンカー

 珍しいドイツミステリである。
 表紙絵が変わってからのハヤカワポケミスは、なかなか気合いが入っている。
 素晴らしい作品が次々と紹介される。
 新潮のクレスト・白水のUブックス、そして、ハヤカワポケミス! 
 極私的に翻訳三大ブックスと呼んでいる。
 で、このお話は、人に代わって謝る、謝罪を代行する、これをビジネスにしようとした青年たちの物語である。謝罪の代行とはなかなか目の付け所がいい。
 謝罪代行社がうまく動き出したときに、一本の電話がかかってくる、それが彼らを悪夢に引きずり込んでいくことになるだが……
 もう、読まずにいられない。

■純文学系

 純粋に純文学といえるかはさておき、芥川賞受賞者作品など。
 エンタメ系とは一線を画するものなのだろうが、その境界は曖昧だな。

○夢を与える 綿矢りさ

 何をいまさらである、綿矢りさが芥川賞を取ったのは10年も前のこと、なのにやっと昨年からやっと読みはじめた。
 書評や本関係のコミュでは散々な評価のようだが、どうしてどうして、素晴らしいではないですか。
 芸能界を舞台に、子役からはじめて売れっ子になった少女の物語、広末涼子を彷彿とさせるのだが、まあ、それはいい。
 栄光と再生の物語である。
 そして、痛い、淡々と痛々しい場面を描写する作者の筆力に平伏するのである。
 
○すべて真夜中の恋人たち 川上未映子

 何も言うまい。
 読めばよい。
 読まないのは、損だ。

○木のぼり男爵 イタロ・カルヴィーノ

 何をいまさら、なのだが、やっと去年読んだ。
 長らく本棚に眠っていた本だ。
 この本を知ったのは、数十年前の新聞に書かれた川本三郎氏の書評か、エッセイだったと思う。何だか不思議な物語だなと思ったものである。
 爾来数十年、手に取ることもなかったのに。
 この歳に読んでよかった、物語が沁みるのである。

 その時の感想は、

 想像力の極北を読んだように思う。
 木から下りることなく、地上に足をつけることなく12歳から70歳くらいまでを過ごしたある男の物語だ。
 樹上の生活の機微、人との繋がり、戦い、そして、もちろんロマンスも。
 物語の哀しさは、いつか終わりがくるということ。
 コジモの生涯が閉じられ、物語の幕が降り、本が閉じられるとき、心は哀切に満たされるのだ。

------------------------------------------------------------

 今年は、どんな本にであえるのだろう。
 
 

|

« 2012年の映画 ベスト | トップページ | コミュニケーション能力は、どうしたら身に付く、向上できるのか【広告】 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 2012年 印象に残った本:

« 2012年の映画 ベスト | トップページ | コミュニケーション能力は、どうしたら身に付く、向上できるのか【広告】 »