2012年 印象に残った本
2012年 印象に残った本
昨年は、100冊強の本を読むことができた。
もっと、もっと読みたいものである。
まあ、少ない読書量だけれど、いい出会いもあった。
心に残る本をいくつか。
■今さらながらの本たち
今さらながら、読んだ本。
これがなかなか良かった。
○やけたトタン屋根の猫 テネシー・ウィリアムズ
戯曲はほとんど読まない。読み慣れないので、難しいと思っていた。
しかし、一読すると、まあ、もう、素晴らしい。
人の欲望と愛憎が短い科白の中に浮かび上がる。
エリア・カザンの演出用のものも併載されている。
私はオリジナルの方が、短く素敵だなとは思う。
○悲の器 高橋和巳
森田童子の「孤立無援の唄」を聴き、
そうだ、高橋和巳を読んでみようと思いたったのである。
今ではなかなか本屋でも見かけることはなくなってしまった。
古本屋でやっと手に入れた。
そして、読み終え、暗澹としたものである。
頭を抱えて、遠くの夕焼けを眺めたくなった。
渺漠のたる悲の光景に、憮然とするしかない。
それほどの力を持った作品である。
○砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 桜庭一樹
桜庭一樹は、凄いのか病んでいるのか、心抉られる物語を書く人である。
この作品は、題名から何か、甘い青春ものなのか、と思っていたが、
甘いどころか、苦い、苦く痛い、物語であった。
まあ、そこがとても魅力なのだけれど。
○夜明け遠き街よ 高城高
寡聞にしてこの作家を知らなかった。
大藪春彦と同世代というから、かなりのベテランだ。
この作品、バブル前の札幌すすきののキャバレーの黒服が主人公。
夜の街で、姿勢よく生きていく姿が清々しい。
○月の影 影の海 小野不由美
十二国記の評判は聞いていた。
読んだ人は、誰もが薦めてくる。
それほどのものなのか、と気になっていた。
読んでみたら、確かにそれほどのものだったし、人に勧めたくなる。
読まなくては、人生の損である。
短篇の名手である。
短いお話しの中に大きな物語を凝縮させている。
表題作は、しづという女の生涯を数十ページの中に詰め込み、滑らかに語っているのである。
「春愁」が切ない。
■エンタメ関係
エンターテイメント系の小説も、もちろん好きである。
昨年はっきりとわかったのだが、どうも日本のパズルストーリーは手に取らない、読まない。食指が動かないのだな。
それ以外のエンタメ系では
○裏閻魔 中村ふみ
参りました。全3巻一気読みでした。
○もぐら 矢月秀作
新聞の書評欄で見つけた一冊。文庫本になって、売れはじめたという。
大藪春彦のハードアクションに、人情をふりかけ、愛情をまぶした感じ。
とりあえず、文庫版4冊を一気読みでした。
○サラの柔らかな香車 橋本長道
ジャケットに惹かれて買ってしまった。
う~ん、う~んと唸りながら読んでしまった。
将棋、盤上の戦い、盤外の人間模様、それが鮮やかに描かれている。素敵。
○謝罪代行社 ゾラン・ドヴェンカー
珍しいドイツミステリである。
表紙絵が変わってからのハヤカワポケミスは、なかなか気合いが入っている。
素晴らしい作品が次々と紹介される。
新潮のクレスト・白水のUブックス、そして、ハヤカワポケミス!
極私的に翻訳三大ブックスと呼んでいる。
で、このお話は、人に代わって謝る、謝罪を代行する、これをビジネスにしようとした青年たちの物語である。謝罪の代行とはなかなか目の付け所がいい。
謝罪代行社がうまく動き出したときに、一本の電話がかかってくる、それが彼らを悪夢に引きずり込んでいくことになるだが……
もう、読まずにいられない。
■純文学系
純粋に純文学といえるかはさておき、芥川賞受賞者作品など。
エンタメ系とは一線を画するものなのだろうが、その境界は曖昧だな。
○夢を与える 綿矢りさ
何をいまさらである、綿矢りさが芥川賞を取ったのは10年も前のこと、なのにやっと昨年からやっと読みはじめた。
書評や本関係のコミュでは散々な評価のようだが、どうしてどうして、素晴らしいではないですか。
芸能界を舞台に、子役からはじめて売れっ子になった少女の物語、広末涼子を彷彿とさせるのだが、まあ、それはいい。
栄光と再生の物語である。
そして、痛い、淡々と痛々しい場面を描写する作者の筆力に平伏するのである。
○すべて真夜中の恋人たち 川上未映子
何も言うまい。
読めばよい。
読まないのは、損だ。
○木のぼり男爵 イタロ・カルヴィーノ
何をいまさら、なのだが、やっと去年読んだ。
長らく本棚に眠っていた本だ。
この本を知ったのは、数十年前の新聞に書かれた川本三郎氏の書評か、エッセイだったと思う。何だか不思議な物語だなと思ったものである。
爾来数十年、手に取ることもなかったのに。
この歳に読んでよかった、物語が沁みるのである。
その時の感想は、
想像力の極北を読んだように思う。
木から下りることなく、地上に足をつけることなく12歳から70歳くらいまでを過ごしたある男の物語だ。
樹上の生活の機微、人との繋がり、戦い、そして、もちろんロマンスも。
物語の哀しさは、いつか終わりがくるということ。
コジモの生涯が閉じられ、物語の幕が降り、本が閉じられるとき、心は哀切に満たされるのだ。
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今年は、どんな本にであえるのだろう。
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