妻が美容院にいった日、夫は妻の変化に一言言わなくてはいけない。(妻の変化に気がつかないのは、トラブルの元である)
夫はつい、こんな言い方をしてしまう。
「おや、今日は、ずいぶんときれいだね(歯が浮くなぁなどと思いながら)」
夫は思うのだ。妻が美容院に行ったことにきちんと気がついたし、褒め言葉も言ったぞ、これで妻の機嫌もいいはずだ。
しかし、コトはそうは運ばない。
妻は、すかさずこう切り返してくるのだ。
「あら、今日は、ということはいつもは汚いということ、ブスだっていいたいわけ、え、そういうこと、どうなのよ。
いつもいつも生活に追われて、子どもたちを追い回しているし、あなたの世話もしなくちゃならない、そんなのではいつもきれいに着飾ることもできないじゃない。
あなたの稼ぎが少ないから、パートに出なくちゃならないし、私は忙しいのよ、それなのに何よ、たまに美容院に行ったらその時だけ、とってつけたように褒めて、いつもはどうなのよ。
え、あなたはどうなのよ。自分の身の回りのことくらい自分でしたらどうなの。
そうすれば、私も少しはお化粧をしたり、身繕いする時間もできるわよ、妻がブスのままでいいの、いいわけないわよね。
だったら、今日の晩ご飯はあなたが作ってよ。わかった!。
ああ、中華がいいわね。餃子をたらふく食べたいわ。
じゃあ、餃子を100個お願いね。」
と、褒めたはずが餃子を100個も作らなくはならい羽目に陥ってしまうのである。
どう言えばよかったのだろう。
まず、「今日は」という言う言い方には、どんな意味があったのか、吟味をしてみることだ。
副助詞の「は」には、【判断の対象や叙述の内容がその範囲内に限られることを表わす。――新明解国語辞典第5版】という意味があるのだ。
つまり、「今日はきれいだ」というのは、今日だけきれいである、他の日はきれいではない、ということを示すことになるのだ。だから、妻からやりこめられることになったのである。
他の日はどうなのか、美容院に行っていない日についても言及し、かつ、プラスの意味を持たせなくてはいけない。
たとえば、同じく副助詞の「も」を使ってみる。「も」には【類似した事柄を列挙したり同様の事柄がまだあることを言外に表わしたりする――新明解国語辞典第5版】という意味がある。
すると、
「おや、美容院に行ったの、今日もきれいだね」
「あら、ありがとう、そろそろ夕食よ」
とまあ、波風立てずに済むのである。
今日も、きれいなのだから、他の日もきれいである。といっているのだ。
しかし、この言い方では、及第点はとれても高得点は望めない。
なぜなら、今日、美容院にいって起こった変化(普段よりもさらにきれいなった――多分)に触れていないからだ。
今日は普段よりもきれいだ、しかも、普段の日もきれいだ、ということ無駄なくいうためには、再び副助詞「は」を使うのである。
例えば、こんな風にいってみよう
「おや、美容院にいったの、今日は一段ときれいだね」
ポイントは「一段と」と一言入れること。
今日は普段と比べて格段にきれいである、と表現できる。
しかも、いつもはきれいであることを抜かしていない。
いつもきれいだし、今日は美容院にいったので、普段に比べて格段にきれいさが増した、事になるからだ。
すると妻はこう応えてくれるだろう
「あら、ありがとう。そろそろ夕食よ、一本つけておくわね」
と、普段はつかないビールが一本余計に出てきたりする。褒美がでてくるのだ。
これで夫婦仲も円満である。
――さて、この話はどこで使おうかな――